王者の風格をお持ちの方はいらっしゃいませんか。
2008-06-05


禺画像]
近くのビルの屋上に時々犬が出没する。
柴犬か秋田犬か、例のCMのような北海道犬か、
あるいはそれらの雑種か、
とにかくよく見かける感じの中型犬。
誰かに連れられている訳ではなくて、
一人、というか一匹だけでいるのだ。
 
最初に見つけた時は目を疑ったが、
どうやらそのビルの所有者に飼われている様子。
自分で非常階段を駆け上って、
小一時間、何となく滞在してまた階段を降りて行く。
自分では、縄張りの見回りのつもりなんだろう。
彼にとっては小高い丘の上かなにかに
見えるのかも知れない。
 
おそらくマーキングもしていると思われるが、
どう考えても、他の犬がマーキングの上書きをしているとも思われないので、
自分だけが支配しているエリアの王者の気分だろう。
事実、鉄の柵越しに高みから遠くを見つめる目は、あたかも広大な支配地を手にした百獣の王のようだ。
 
…ちと言い過ぎた…
 
そもそも人に飼われている動物たちに、この文明社会はどう映っているのだろう。
車にしても、電柱にしても、高層ビルにしても、
それぞれの動物なりの価値観や解釈で、おそらくは不合理も無く収まっているんだとは思う。
「くさい息を吐き速く走る大型獣」「細い枝の葉の落ちた木」「断崖が連なる異形の山」という感じか。
文明といったところで、太古の昔と同じく、太陽は昇るし月は輝くし、雨も雪も降る。
本質的に変わった事はそれほど多くないともいえよう。
温暖化や環境破壊が深刻さを増しているとされるが、犬や猫たちは何も感じてないのではないか。
いや、もしかすると十分にそれを察知しているからこそ、あの「遠い目」だったのやも知れぬ。
 
あの犬はひとしきり、丘の上の秘密の場所ならぬ、ビルの屋上で王者の気分を味わったのち、
おそらく、主人の元に帰った後は一転、最下位の地位に甘んじるのだろう。
なんだか、身につまされる。
どこかのお父さんのようではないか。
[考察<consideration>]

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